僕が中学の頃に所属していたサッカー部の顧問は、僕が2年に上がるタイミングで「生徒に暴力を振るった」との理由で他の学校へと飛ばされていきました。その先生はサッカー経験者で、その中学校をサッカーの強豪校に育て上げた実績があります。

後任に就いたのは陸上部の顧問をやっていたというおじさんで、通称「ハラちゃん」です。僕らの学年が2年に上がるタイミングで当校に赴任してきました。

ハラちゃんにはサッカーの経験はありません。ただし陸上の実力はすさまじいらしく、当時はマスターズに出場するなど、精力的に体を動かしていました。

サッカー未経験者が顧問になることに不安を抱えていた僕らですが、実際にいくつか困った点がありました。

まず、サッカー部が練習している横でハラちゃんが練習をしているのですが、それがあまりにも危険すぎるという点です。

ハラちゃんのメインの種目は「ハンマー投げ」です。

男子中学生がサッカーをしているすぐ横で、逆三角形のおじさんが鉄球を振り回したり放り投げたりを繰り返しているのです。

僕らの練習を見てくれよとはいいません。せめて大人しくしといてくれ。

ハラちゃんがその地域の陸上界のレジェンド過ぎたという点も非常に困りました。

サッカーの大会に参加するために向かった試合会場では、別のグラウンドで陸上の選抜選手の練習会が行われていました。ハラちゃんに率いられてその近くを通った矢先、陸上の練習場から大勢の人がやってきて、ハラちゃんを拘束し、そして陸上の練習場へと連れていきました。

彼らにはハラちゃんの後ろにいるサッカー部員が一人も目に入っていないようです。

顧問であるハラちゃんを奪われた我々は、試合会場内に適当に場所を陣取り、試合開始まで待機していることにします。

そこで部長があることに気が付きます。

「ハラちゃんからスケジュールもらってないぞ」

なんと、試合の開始時刻が分からないのです。

しかし、その時すでにハラちゃんは陸上の選抜選手への指導へ熱を出しています。我々がそのグラウンドへ侵入することは当然許されません。仕方ないので部員全員で陸上のグラウンドを取り囲みます。そこで大きな声をあげますが、その声はハラちゃんへは届きません。

非常に困った思いをしている矢先、ハラちゃんのぶん投げたハンマーがちょうど僕らが見ている目の前に飛んできました。そして、それを取りに来たハラちゃんを奪還し、試合のスケジュールをぎりぎりのところで知ることが出来ました。

正直そんなところまでハンマーが飛んでくるとは到底思いませんでしたが、部員の危険を顧みずに練習をしていた成果が出たのだと思われます。

 

困ったことも多い一方で、非常にありがたい部分もありました。

僕らの学年は1年生のころからスターティングメンバー11人の内9人も地域の選抜メンバーに選ばれているというとんでもないスター軍団でした。

その軍団が、陸上出身の顧問の指導によってすさまじい体力とフィジカルを手に入れることが出来たのです。

鬼に金棒とはまさにこのことです。出場する大会で優勝を総なめにしてきました。

ただ、非常にきつい練習だったため、ロボコンに出場するからなどと意味不明な理由でさぼる人間が出てきたのもまた事実です(僕の事です)。

 

最後に、顧問が試合に向かう僕らにいつもかけてくれた言葉をご紹介して締めたいと思います。

 

「アイオブザタイガー!」

意味は分かりません。
虎の目がどうかしたんですかね。